Qさん: |
最近、新聞やTVで、知的財産権,知的所有権といった言葉をよく聞きますが、どのようなものですか。 |
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Aさん: |
知的財産権や知的所有権、或いは無体財産権といったりしますが、これらはいずれも、人間の知的創造によって生じた形を持たない財産的価値を有する権利の総称です。それぞれ表現は異なりますが同じものです。企業では担当部署を「知財部」といったり、大学では「無体財産講座」といったりしています。ここでは便宜上「知的財産権」で統一します。例えば、質問者のQさんが身につけているネックレスを考えてみてください。ネックレスは現実に形があり(有体物といいます)、Qさんが実際に持つことができます(これを専有できるといいます)。これに対して、技術的なアイデアやデザイン,文学,音楽等には形がありません。知的財産権とはこれら形のないものに関する財産権なのです。 |
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Qさん: |
でも、新しい技術を採用した新製品はどんどん世の中に出ていますし、文学作品だって、本として発売されているじゃないですか。これは形があるんじゃないんですか。実は私、最近デジカメを買ったのですが、画質も良くなってますし、新しい機能が増えていましたよ。このデジカメは形が有りますし、私が持つことができますよ。 |
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Aさん: |
そうですね。デジカメとしては形がありますよね。でも、それは画質を向上させる新しい技術を採用した実施品としてのデジカメに形があるのであって、画質を向上させる技術そのものには形が無いんじゃないですか。同様に文学作品も本という形を有するものは文学作品を複製したものですね。もし、画質を向上させる技術そのものや文学作品そのものに形が有れば、それは一つだけしかないことになりますよね。後でゆっくり考えてみてください。
知的財産権は総称ですから、知的財産権や知的所有権といった名称の単独の権利や法律が存在するわけではありません。一般には別表に示すものが知的財産権に含まれます。
この中で特許権,実用新案権,意匠権,商標権をまとめて産業財産権といい、著作権とともに知的財産権の中核をなすものです。 |
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Qさん: |
何か難しそうですね。特許権とか商標権って何を保護するんですか。何故4つの権利に分かれているのですか。 |
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Aさん: |
それは、何を保護するかによって、それぞれ適した保護システムが違うからです。 |
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保護法益/客体 |
保護期間 |
特許権 |
発明/発明 |
→技術的思想の創作 |
出願から20年 |
実用新案権 |
考案/考案 |
→技術的思想の創作 |
出願から10年(平成17年4月1日以降の出願) |
意匠権 |
意匠/意匠 |
→物品の美的外観 |
登録から15年(平成19年3月31日までの出願)
登録から20年(平成19年4月1日以降の出願) |
商標権 |
業務上の信用/商標 |
→識別標識 |
登録から10年(更新可) |
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*発明→ |
物または方法の技術面のアイデアのうち高度なもの、考案と比べて長ライフサイクルのもの(ハードと結びついたコンピュータプログラム、植物、動物、微生物 なども含む)
ex.カメラのオートフォーカス機構,遺伝子情報の解析方法 |
*考案→ |
物品の形状、構造などの技術面のアイデアで早期実施、短ライフサイクルのもの
発明に比べて技術が高度でなくてもよい,方法のアイデアは対象外
ex.ゴキブリ捕獲器 |
*意匠→ |
物品(物品の部分を含む)の形状、模様、色彩などの物の外観としてのデザイン
単なる絵や図柄は対象外
ex.カメラ,自動車,家具のデザイン |
*商標→ |
商品やサービスについて自他の識別力を有する文字、図形、記号、立体的形状、(色彩)
ex.SONY,McDonald’s,宅急便の黒猫図形 |
特許制度を例にとると、特許法第1条には、「この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする」とあります。発明や考案は、目に見えない思想、アイデアなので、家や車のような有体物のように、目に見える形でだれかがそれを占有し、支配できるというものではありません。したがって、制度により適切に保護がなされなければ、発明者は、自分の発明を他人に盗まれないように、秘密にしておこうとするでしょう。しかしそれでは、発明者自身もそれを有効に利用することができないばかりでなく、他の人が同じものを発明しようとして無駄な研究、投資をすることとなってしまいます。そこで、特許制度は、こういったことが起こらぬよう、発明者には一定期間、一定の条件のもとに特許権という独占的な権利を与えて発明の保護を図る一方、その発明を公開して利用を図ることにより新しい技術を人類共通の財産としていくことを定めて、これにより技術の進歩を促進し、産業の発達に寄与しようというものです。
このことを端的に言い表したものとして、米国旧特許庁の玄関にはリンカーンの次の言葉が掲示されているそうです。
「特許制度は、天才の火に利益という油を注いだ」
(The patent system added the fuel of interest to the fire of genius)
ちなみに、リンカーンはアメリカの歴代大統領のうちでただ一人特許を取得した発明家でもあります。
これら特許権等の工業所有権は特許庁に「登録」されて初めて権利が発生します。ですから、如何に優れた技術やデザインを創作しても、特許出願等を行って登録を受けなければ権利は発生しません。
一方、著作権法は思想又は感情を創作的に表現した著作物を保護するものであり、著作物完成と同時に著作権が発生するものであり、権利発生の要件として何らの登録も必要としません。保護期間は著作者の死後50年間です。なお、文化庁への登録制度もありますが、権利発生要件ではありません。
*上記表は、特許庁ホームページ掲載のものを使用しました。
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